上野敏郎の
         上野敏郎の今週のコメント

第1396回普段着のとかちミーティング


開催日 令和3年12月15日(水)
【話 題】 子どもは遊びの大天才 [19]
− はないちもんめ −


〜はないちもんめ〜

「はないちもんめ」は、古くから伝わる遊びであり、江戸時代に普及した「子とろ子とろ」系
の遊びから独立したと考えられています。

「はないちもんめ」を、漢字で書くと「花一匁」。 「匁」には貨幣の単位と重さの単位、
二つの意味があります。貨幣の単位は一匁小判一両の六十分の一、現在の価値で1200円くらい。
重さの単位は1匁3.75グラムです。この歌では価格を表し、1200円程度の花を売り買い
するやりとりをあらわしています。 しかし実は「花」にはもっと深い裏の意味がありました。

「花」は若い女性の隠語を、「花」の売買とは若い女性の売買をあらわしているのです。
「女衒」つまり若い女性を遊郭へ斡旋する仲介業者と、娘を売らなければならない親
とのやりとりを歌っているというのです。「勝って嬉しい」とは娘を買って嬉しいという
女衒の気持ちを「負けて悔しい」とは値段を負けて売らなければならない
親の悔しい気持ちを表していたのです。

幼い頃によく遊んでいた「はないちもんめ」ですが、その昔、貧しい時代や身分を生きぬく為
には子供を間引きしたり、売ったりしなければならない悲しい時代がありました。
 「あの子が欲しい」とは、美しい娘を欲しがる女衒の恐ろしい言葉だったそうです。
 いつ頃生まれた歌なのかという疑問が浮かびますが、昭和のはじめに京都で記録されて
いるそうです。誕生したのはせいぜい大正若しくは明治のころでしょう。



<はないちもんめ>

勝ってうれしいはないちもんめ   負けて悔しいはないちもんめ
隣のおばさんちょっと来ておくれ   鬼が怖くて行かれない
お布団かぶってちょっと来ておくれ   お布団ぼろぼろ行かれない
お釜かぶってちょっと来ておくれ   お釜底抜け行かれない
鉄砲かついでちょっと来ておくれ   鉄砲あるけど弾がない
あの子が欲しい   あの子じゃわから
この子が欲しい   この子じゃわからん
相談しよう   そうしよう  

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 〜豆知識〜

〜わらべ歌と怖ーい意味〜

今までもいくつかご紹介してきた昔遊びのひとつ「わらべ歌」ですが、
子ども達が楽しく遊ぶ姿の裏側には、わらべ歌に隠された恐ろしい
意味がある曲が多々あります。今回ご紹介した「はないちもんめ」には、
子どもの間引きの意味が。また、以前ご紹介した「とおりゃんせ」・「かごめかごめ」
にも、それぞれ神隠しの意味や妊婦さんの悲しいお話等々が存在します。
それぞれ諸説はありますが、わらべ歌にこわい話がついてくるのは
日本だけの風習なのでしょうか?

調べてみた結果、やはり日本だけではないようです。
実際に、イギリスを中心に伝承されている童謡「マザー・グース」。
イギリスもしくはアメリカで発祥したもので、子どもたちの教養の礎となっています。
 名前の由来には諸説ありますが、1780年にイギリスの児童書出版業者
ジョン・ニューベリーが『マザー・グースのメロディ』というタイトルの童謡集を
刊行したのがきっかけだそうです。
日本でも親しまれている「きらきら星」や「メリーさんの羊」「ロンドン橋が落ちた」も、
「マザー・グース」のひとつです。

「ロンドン橋が落ちた」は、日本でいう「かごめかごめ」と同じ系統の
遊びですね。この曲に隠された怖い話は、10世紀ごろイギリスの城や教会で
「子供の監禁」をしていた話に基づいている、というものです。
当時民衆に危害を加えていた「バイキング族」がロンドン橋を壊したとされる記録はありません。
その一方、子供たちを特定の建物の中に監禁することで、その建物が頑丈になる、
当時、そんな恐ろしい考えが存在したことは確証されています。

 たしかに「ロンドン橋」の歌が終わったとき、その時腕の下を通った子供が
アウトになります。これは中世の風習をそのまま歌にしたものなのかもしれませんね。

日本でも海外でもわらべ歌と怖い話には切っても切れないつながりがあるようです。
 歌と遊び(動作)がセットになったこのわらべうたには、人々の暮らしや思い、
そして人間として生きるための大切なメッセージが込められているのかもしれない
ことが、どの国でも語り継がれている理由なのかもしれませんね。



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〜はないちもんめ〜





(画:鎌田博文氏)



(画:菅野孝雄氏)

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